令和の虎522人目「独自性と技術の融合による次世代言語モデルを作りたい」レポート

1.動画概要:

 元 与沢翼のグループ会社CTO・田端厚賢(50)による「進化するAI、独自性と技術による次世代言語モデルを作りたい」希望金額1,000万円中、350万円でNOTHING。
 今回の収録はタイで行われている。出演した虎は以下の通り。
 ・林尚弘(株式会社癒し~ぷ 代表 株式会社 FC チャンネル 代表取締役) 
 ・竹村義宏(竹村義宏事務所 代表)
 ・桑田龍征(NEW GENERATION GROUP オーナー) 
 ・竹内亢一(株式会社 Suneight 代表取締役)
 ・安藤功一郎(GA technologies (Thailand) RENOSY (Thailand) 代表取締役CEO)
 ・司会:伊藤慎之介(FCチャンネル取締役)

2.動画考察

・志願者の経歴から見るポテンシャル

 志願者は高校卒業後、親戚が経営する会社にて、特殊車両の架装や修理、冷凍機の取り付け業務に5年間従事する。次に、CGを手掛けたいと思い立ち、京都コンピュータ学院コンピューターアート科で3DCGやプログラミングを学ぶ。その後、ランゲート株式会社(※1)に入社、エンジニアとして5年間勤務する。
 エンジニア勤務を続ける一方で、早稲田大学人間科学部eスクールに入学。プログラミング技術を4年間学び、卒業後はフリーランスとして活動を開始。卒業後は、NTT-ME、ザッパラス、リクルート、小学館、幻冬舎など多くの企業と業務委託として従事し、現在に至る。
 2014年に与沢翼氏が経営するグループ会社のエンジニアとして関わり、CTOに就任。しかし、与沢氏の事業が10億円規模の債権を抱えた際、債権者から暴力を受け、前歯を2本失っている。志願者は与沢氏にとって都合の悪い事実を知る人間として見られており、自身のことを「(与沢氏から)消された人間」と呼んだ。
 また志願者は、仮想通貨で一時的に成功を収めたものの、税負担を回避する目的でタイへ移住している。

※1…ランゲート株式会社とは、マンション向けインターネット接続サービスを手掛ける企業。

・志願内容と、その評価

 本プランは「ChatGPT(※2)を超えるチャットボット(※3)を作る」という内容で、希望形態は投資、希望金額は1,000万円。資金はAI開発時に用いる業務用の高額なグラフィックボードの購入などの機材費にあてる。
 ChatGPTは汎用性の高さが強みである一方で、特定の専門分野においては十分な回答を提供できない場合がある。志願者はその課題を解決すべく、医療、法律、特許などの専門領域に特化したAIモデルを構築し、企業や業界に最適化されたAIを提供することを目指している。
 また、エンターテインメント分野においても「AIアイドル」や「DJ社長Bot」などのキャラクター型チャットボットを開発し、新たな市場を創出することを考えている。
 志願者は技術的なアプローチとして、オープンソース(※4)を活用し、特定の分野に合わせて強化学習する方法を採用している。これにより開発コストを抑えつつ迅速な開発が可能と見込んでいる。
 志願者はオープンソースの優位性を説明したが「ある程度の知識を持てば誰でも出来る」と発言したことで、虎からは志願者個人に1,000万円を投じる意味について問われた。
 これに対し、志願者は自身がプログラム開発に20年携わっていることを挙げた。また業務においてAIの使用を禁じている企業が多いことから、個人でなら短期間、低コストでの開発が可能であることが強みだとしている。
 しかし、志願者自身の実績として、AIを用いて生成した画像や音声を提示したものの、そのクオリティは現在一般的に見られるものと比較して特段優れているわけではなかった。そのため、むしろ虎たちの期待値を下げる結果となった。
 議論は、志願者が開発者として独自性やオンリーワンの技術を有しているかどうかに焦点が当てられた。しかし、志願者の説明はAI技術の優れた点を語るに留まり、自身の具体的な技術的貢献や独自性については具体的に答えることができなかった。
 桑田氏は「エンジニアなので、自己アピールが苦手なのかもしれない」と一定の理解を示したものの、虎たちからは志願者の能力や提案の価値について納得感を得ることはできなかった。

※2…ChatGPTとは、人間が書いた文章のような自然な文章を生成する能力を持ったAI。
※3…チャットボットとは、人間との対話をシミュレーションするプログラム、または自動応答システム。
※4…オープンソースとは、ソフトウェアやプログラムのソースコード(設計図)を公開し、誰でも自由に使用、改良、再配布できるようにしたもの。

・志願者の人間性

 桑田氏は「歯が抜けている人間を雇って、いい経験がない。身だしなみがちゃんとしていない印象がある」と志願者の第一印象を述べた。さらに志願者が着用していたルイヴィトンのシャツが偽物と見破った上で「ハリボテ感がある」と評価した。これに対して志願者は「このシャツはギャグです」と答えたが、林氏からは「おもしろくない」と否定的な反応を示した。
 また志願者は仮想通貨への投資について、VALU(※5)のサービス終了により最大3億円の価値を失うという大きな損失を経験している。当初は仮想通貨に対する減税を目的にタイへ移住していたが、仮想通貨を失った後もタイに在住している理由については「タイでの生活が居心地良いため」とした。
 さらに志願者は、自身の出身が石川県珠洲市であり、能登半島地震で実家が流されたことを明かした。
 桑田氏はこのような志願者を「色々巻き込まれ役、世界を股にかけて騙されている」と表現し、儲かりそうなことに早く飛びつく嗅覚に対して評価したものの「(志願者には)運がない」と結論づけた。
 また志願者は本プランの説明において「オープンソース」「ChatGPTのクローン(※6)」「NVidia RTX4090、Vラボ24G(※7)」「ファインチューニング(※8)」といった専門用語を多用した。しかし、これらの用語の具体的な説明が不足していたため、虎たちにとっては理解が難しいものとなっていた可能性がある。

※5…VALUとは、株式会社VALUが運営していた、自分自身の価値を仮想通貨で売買するサービス。
※6…クローンとは、既にあるものを再現または模倣したもの。
※7…NVidia RTX4090とは、高性能グラフィックカードのこと。AI開発、高解像度映像編集、3Dレンダリング、科学計算などの高度な用途で使用される。
※8…ファインチューニングとは、すでに学習済みのAIモデル(事前学習モデル)を、特定のタスクや用途に適応させるために、追加のデータを使って再学習させるプロセス。

・虎が出資する意義、メリット

 ディスカッションを通して、志願者が開発するAIがどのような価値を持つのかを虎たちが理解するには至らず、またそれを企業に販売するビジネス適性が志願者に欠けているとされた。そのため、出資するメリットを見出すことは難しいものと考えられる。

3.まとめ

 本プランは、志願者でなければ成し得ない独自性があるとは判断されなかった。安藤氏は、出資した虎たちが連携してAIを企業にうまく売り込むことで可能性を広げられることを期待し、200万円の出資を提示した。しかし、最終的な合計出資額は350万円に留まり、NOTHINGとなった。
 オープンソースの活用について、志願者が「自分なら短期間かつ低コストで実現できる」という具体的な強みを、他社事例と比較しながら説明していれば、提案に説得力が増していただろう。
 また、AIの技術的な説明にこだわるのではなく、志願者自身の人生経験を一種の「ネタ」として活用し、それを「苦労して乗り越えてきた自分の強み」として語ることで、技術者の枠を超えた人間的な魅力を伝えることができたように思う。特に、与沢氏との繋がり、実家の喪失や仮想通貨の損失といった話題を利用し、アピールすることで虎からの共感を得られた可能性があるものと考えられる。

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